パパ「……やぁ、ごめんごめん! 待たせてしまったみたいだね」
れいあ「あっ、パパ! ううん、全然待ってないよ。れいあ達も今来たところだもん。ね、すずか?」
すずか「パパさん、こんばんは。そうです、来たところだから……大丈夫です」
声をかけてきた男性を見て、れいあが近寄る。
きちんと頭を下げて挨拶をするすずか。
パパと呼ばれた男性もお辞儀を返している。
ごく当たり前の待ち合わせの風景。
気さくで明るい雰囲気に、周囲の誰一人疑うものはない。
れいあ達も、すっかり慣れっこといった様子だ。
パパ「ほんとかい? なら良かった! 今日もいつものところでいいのかい?」
れいあ「はーいっ! 今ね今ね、すずかと何食べよっかって話をしてたところなんだー! ねーパパ、好きなもの頼んでもいーい?」
パパ「ははは、もちろんだとも」
れいあ「やったぁ! パパ、優しいから大好きっ♪」
腕にしがみついてくるれいあに、嬉しそうな様子のパパ。
勢いが強すぎたのか、すこしよろけている。
すずか「パパさん、大丈夫ですか? れいあちゃん、乱暴したらダメだよー」
パパ「ははは平気平気、むしろ嬉しいくらいだよ。それじゃあ……いこうか」
すずか「そう……ですか? だったらいいんですけど。ふふ、れいあちゃんちょっと強引だから、パパさん困ってるかもと思って……」
少し照れて恥ずかしそうに微笑むすずか。
パパといっても、どちらかの親ではない。
そう……ふたりは今『パパ活』の真っ最中なのだ。
もしかしたら、不審な目を向ける人もいるかもしれない。
だが、見知らぬ誰かを気にする余裕のある人は少ない。
今も歩き出す三人を見とがめる人は誰もいなかった。